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特許Q&A



Q1.「知的財産権」とは何か?

 そもそも「知的財産権」って何のことでしょうか?実際に「知的財産権」という権利があるのでしょうか?答えは「NO」です。
  「知的財産権」とは、人間の知的創造活動によって生み出されたもの(アイデア等無形なものなど)を、創作した人の財産として保護するために一定期間権利を与える権利の総称なのです。
  全体のイメージをつかんでいただくために、知的財産権の概要を下記の表にまとめました。大きく分けて、知的財産権は「知的創作物についての権利」と「営業標識についての権利」に分類することができます。その中でも特に、網掛けをした特許権、実用新案権、意匠権、商標権をまとめて「産業財産権」といいます。


【知的財産権の概要】

知的創作物についての権利

営業標識についての権利

特許権(特許法)
自然法則を利用した技術的思想の創作(発明)に対して出願した日から20年間保護

 商標権(商標法)
商品・役務に使用するマーク(文字・図形・記号など)を登録の日から10年間保護(更新可能)

 実用新案権(実用新案法)
物品の形状・構造・組み合わせに関する考案(小発明)に対して出願した日から10年間保護

 商号権(商法)

 意匠権(意匠法)
創造的で美的な外観を有する物品のデザイン(意匠)に対して登録の日から15年間保護

 著名商標・原産地表示等
(商標法・不競法)

 著作権(著作権法)

 

 回路配置権(半導体集積回路の回路配置に関する法律)

 植物新品種(種苗法)

 企業秘密(民法・刑法・不競法)


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Q2. なぜ特許を取得する必要があるのか?

 「新たに開発した技術を広く普及させるには、特許を取得しないほうがよいのでは?」。このような質問を受けることがあります。特許権は独占権であり、権利を有していない者は自由に実施できないからです。しかし、「特許を取得する=普及しない」という構図は必ずしも真実ではありません。
  経済がグローバル化した今日では、開発途上国の安価な労働コストによる製造が可能となっていることから、商品等が特許権により保護されていないと、やがて安価な模倣品が市場に出回るようになります。安価な模倣品は市場に価格破壊をもたらします。そのため、多大なコストを投じて開発した商品であってもコストダウンを迫られ、徐々に体力を奪われていきます。最悪の場合価格競争に敗れ、市場から撤退せざるを得なくなるでしょう。安価な模倣品に市場が食い荒らされて価格破壊が起こると、そのうち模倣品を製造・販売していた企業ですら利益が出なくなって市場から商品が消えてしまいます。

一方、特許を取得していた場合はどうでしょうか?
メリット 1
  特許を取得していれば、他社は模倣品を製造・販売することはできません。そのため、市場が荒らされることはなく、仮に模倣品が出回っても特許権に基づいて差し止め請求や損害賠償請求などの権利行使が可能です。
メリット 2
  特許権は財産権の一種ですので、第三者に譲渡することによって収入を得たり、第三者にライセンスすることによって収入を得ることもできます。

 このように、特許は「自社の技術を守る」という側面と、「財産として活用する」という2つの側面があります。いずれの側面においても、特許によって開発者に利益を得る機会を与え、その利益を新しい技術の開発に投入することによって、また優れた技術を創造することができるのです。これが「知的創造サイクル」と呼ばれているものです。
  ただ、誤解のないように申し上げますが、特許を取得していなければビジネスは成功しないというわけではありません。逆に、特許を取得していれば必ずビジネスが成功するというわけでもありません。あくまでも貴社のビジネスモデルにおいて、特許をどのように活用するかが重要です。


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Q3. 「特許」と「特許権」って違うの?

 知的財産に関する用語は難解なものが多いですね。本書ではなるべく法律用語の使用を避けますが、基本的な用語は押さえておきたいものです。
  例えば、「特許」、「特許権」、「特許出願」、「発明」、「特許発明」、という用語があります。これらの用語はすべて意味が違います。わかりますか?

特許

「特許」とは、特許出願が特許庁の審査を経て、最終的に登録されたものをいいます。使用例は、「特許を取得する」、「特許される」。時々、特許出願中の発明について「特許を取った」と言っている人がいますが、それは間違いです。

特許権

「特許権」とは、特許発明を一定期間独占的に実施できる権利のことです。使用例は、「特許権を行使する」(「特許を行使する」とは使
いません)。特許権の存続期間は、特許出願をした日から20年です。
商標権と異なり、登録された日からではない点に注意してください。

特許出願

「特許出願」とは、特許権の付与を請求するために行う手続のことです。一般的に使用されている「特許申請」という用語も同様の意味になりますが、弁理士はあまり使いません。
「出願」も「申請」も手続のことを意味するので「特許出願手続」又は「特許申請」とはいいますが、「特許出願申請」というと意味としておかしくなります。

発明

「発明」とは、一般には新しいアイデア全般を指す言葉です。
しかし、特許法では技術に関するものに限定されており、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。具体的には後ほど説明します。

特許発明

「特許発明」とは、発明の中でも、特に、特許を受けている発明をいいます。従って、特許出願中の発明は、特許発明とはいいません。


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Q4.どんな発明が特許されるのか?(その1)

 「特許」などと聞くと、さも優れた大発明でなければ認められないと思い込んでいる方が多いような気がします。しかし実際には「えっ?これも特許なの?」というものもあるのです。
それは特許庁の審査において、特許というものが、優れた発明に対してのみ付与されるものではなく、拒絶する理由がない発明に対して付与されるからです。但し、特許を受けるためには(拒絶されないようにするためには)、以下に説明する数々のハードルをクリアしなければなりません。

(1)特許法上の発明であること
  特許法で発明は次のように定義されています。
「第2条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」
  従って、特許法上の発明の定義を満たすものであれば、すべて発明といえます。しかし、特許法で具体例を挙げていたらきりがありません。例えば下記のものは「発明」には該当しません。そもそも特許法上の発明でなければ、特許法で保護する必要がないからです。

① 自然法則そのもの

例)万有引力の法則

② 単なる発見

例)動物の新種の発見

③ 自然法則に反するもの

例)永久機関

④ 自然法則を利用していないも

例)ゲームのルール自体、数学の公式


(2)産業上利用できる発明であること
  先ほどの例は「そもそも発明ではない」ものの例です。しかし、特許法では、発明には該当しても、それが「産業上利用できる発明」でない場合は特許になりません。なぜなら特許法は、産業の発達を図るのが目的だからです。例えば下記のものは、「産業上利用できる発明」には該当しません。

① 人間を手術、治療又は診断する方法の発明

例)痛みを伴わない外科手術方法、癌の早期発見方法

② その発明が業として利用できない発明

例)喫煙方法


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Q5.どんな発明が特許されるのか?(その2)

 一般に企業で開発されたような技術は先ほど説明した「特許法上の発明」の要件及び「産業上利用できる発明」の要件は満たしていることがほとんどでしょう。いってみれば(その1)で説明したことは特許の前提となる要件です。特許庁の審査でしばしば問題となるのがこれから説明する要件です。

(3)新しいこと(新規性)
  すでに知られている発明は特許にはなりません。ですから、「おっ、これはいい発明だ」といってテレビで見た他人の発明を自分の発明として特許出願しても特許にはなりません。
  つまり、例えば、商品を販売した、学会や研究会で発表した、テレビで製造方法を実演した、新聞、雑誌、論文、インターネットなどに掲載した、などの発明は、新規性のない発明となり、特許を受けることができません。
  但し、上記の場合でも、新規性を失った日から6ヵ月以内に特許出願するなど、一定の場合は救済されます(新規性喪失の例外)。詳細は省略しますが、もう公表してしまった場合でも弁理士等に相談されることをお勧めします。

(4)容易に考え出すことができないこと(進歩性)
  発明が新しくても、同じ分野の技術者が容易に考え出すことができる程度の発明は特許にはなりません。通常の技術者が容易に発明することができるようなものまで特許権を付与することは、産業の発達に役立たないばかりでなく、権利の乱立を招き、却ってその妨げになるからです。
  容易に考え出すことができない程度の困難性を、「進歩性」といいます。逆に、容易に考えられるような発明は、進歩性のない発明ということになります。
  例えば、ある効果を狙ってすでに知られた材料の中からの最適材料を選択しただけの発明や、「目覚まし時計付きラジオ」など、ある部品とある部品を組み合わせても、1+1=2の効果しかならないような寄せ集めの発明は、進歩性がない発明と判断され、特許を受けることができません。


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Q6.どんな発明が特許されるのか?(その3)

(5)先に出願されていないこと
  特許は早い者勝ちです。
同じ内容の特許出願が存在した場合は、先に特許出願した者が特許を受けることができます。例えば同日の午前中と午後に同じ特許出願があった場合は、午前中に特許出願した者が特許を受けることができます。
  発明を十数年間大切に温めてきた、という方から出願のご依頼をいただいたことがあります。
しかし、調査したところ、同様の発明が十数年前に出願されていました。特許出願をすると決めたら、なるべく早い時期に特許出願を行うのがセオリーです。

(6)公序良俗に反しないこと
  その発明によって公の秩序や善良な風俗を乱すような発明は特許にはなりません。
例えば、わいせつなもの、犯罪幇助を目的とするものなどです。今どきの例でいえば、振り込め詐欺を高確率で成功させる為のボイスチェンジャーの発明などがこれに当たるでしょう。

(7)明細書の記載要件を満たすこと
  例えば、以下の場合は明細書の記載要件を満たしていないと判断されてしまいます。
・第三者が実施できる程度に記載されていない場合
・発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載してしまった場合
・特許を受けようとする発明が不明確である場合

(8)発明の単一性を満たすこと
  特許出願の費用を節約したいからと言って、一回の特許出願に、異なる種類の発明をいくつも詰め込むことはできません。例えば、稲の栽培方法発明と、稲の栽培とは無関係の農薬の発明を一つの出願に含めることはできません。
  二以上の発明を含めたい時は、それらの発明の技術的特徴が同じである場合に限られます。


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Q7.発明の種類(カテゴリー)とは?

 発明には大きく分けて「物の発明」と「方法の発明」があります。「方法の発明」はさらに「単純方法の発明」と「生産方法の発明」に分けられます。発明のカテゴリーによって範囲権利が異なるので、ぜひ押さえておきたいところです。

(1)物の発明
  発明が物(物品)として表現されたものです。コンピュータプログラム、遺伝子、動植物なども物の発明に含まれます。
物の発明について特許権が発生している場合、特許発明の物品を業として生産する行為、販売する行為、使用する行為に対して権利行使することができます。

(2)方法の発明(単純方法の発明)
  発明が方法として表現されたものです。プロセス(順序、時間など)を必須の構成要素とする発明がこれに当たります。
  方法の発明について特許権が発生している場合、特許発明の方法を使用する行為に対して権利行使することができます。


(3)物を生産する方法の発明(生産方法の発明)
  基本的には方法の発明と同じですが、その方法によって物(物品)が生産される場合がこれに当たります。 
  物の生産方法について特許権が発生している場合、特許発明の生産方法を使用することのほか、生産された物を使用することなどの行為に対しても権利行使することができます。

 発明のカテゴリーが何に該当するか、実は簡単に判別できる方法があります。それは、【特許請求の範囲】の請求項の語尾を見るのです。



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Q8.特許出願を依頼する際に必要な資料は?

 実は、特許出願は個人で行うもできます。
  ですが、特許出願には法律で定められた条件が数多くあるため、個人で特許出願の書類を作成し、出願審査の請求を行い、拒絶理由通知に対して的確に対応し、最終的に特許査定を勝ち取るには煩雑な手続と根気が要求されます。

 そこで特許出願の専門家である弁理士が代理人となって特許出願を行うのです。では弁理士に特許出願を依頼する際、どんな資料があればよいのでしょうか?中には特許公報の項目に基づいて、出願書類の形でドラフトを提出してくださる優秀な方もいますが、すべてのクライアントにそこまでは要求できませんので、一般的に弁理士が知りたい情報を以下に列挙します。


・特許出願人、発明者の氏名(名称)、住所(居所)
・発明の名称
・特許を取得したいポイント
・従来技術にどのようなものがあったか、どのような問題があったのか
・従来技術の構成と何が違うのか
・好ましい実施態様又は実施例
・実施態様又は実施例を説明するための図面
・実験データ


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Q9.出願から登録までの手続は?

(1)特許出願
   特許出願は、法令で規定された所定の書類を特許庁に提出することにより行います。
「所定の書類」とは、「特許願」(願書とも言います)、「特許請求の範囲」、「明細書」、「要約書」、「図面」を指します。これらの書類は、クライアントの指示に基づき、特許事務所が作成します。

(2)出願公開
  出願された日から1年6月を経過すると、発明の内容が特許公開公報によって自動的に公開されます。公開されるといっても、新聞の折り込みチラシの中に特許公開公報が配布されるわけではなく、特許電子図書館(IPDL)にアップされて閲覧可能な状態になることを言います。

(3)出願審査の請求
  特許出願を行っても、それだけでは特許庁は出願を審査してくれません。出願した日から3年以内に、出願審査の請求という手続を行うことによって初めて審査官が審査してくれます。
  もし出願日から3年以内にこの手続を行わなかった場合、権利化の意思がなくなったものとみなされ、出願が取り下げられてしまいますので注意が必要です。

(4)審査
  「出願審査の請求」を受けて、審査官が出願を審査します。審査官は特許要件を満たすか否かを審査し、一つでも特許要件を満たしていないと、拒絶理由が通知されます。この通知に対しては、手続補正書を提出して出願内容を補正したり、意見書を提出して反論をすることができます。
  一方、拒絶理由がない場合又は手続補正書や意見書で拒絶理由が解消したと判断された場合は、特許査定となります。

(5)登録・権利発生
  特許査定となった場合、特許庁に特許料を納付することにより、特許権が発生します。仮に特許料を納付しないと、せっかくの特許査定が取り消されてしまいますので注意が必要です。

(6)権利の消滅
  特許権は特許出願の日から20年間存続します。但し、権利を維持するためには1年ごとに特許料を納付する必要があります。特許料は1年ごとに納付することも、複数年分納付することもできます。仮に特許料を納付しないと、権利は消滅してしまいます。
  また、特許権が発生した後に無効審判が請求され、無効理由(本来特許されるべきではなかったとする理由)があると判断された場合も、特許権が消滅します。


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Q10.「PAT.P」って何のこと?

 特許法では、特許に係る商品に対して特許表示を奨励しています。これは、特許表示によって第三者がその商品に関する技術に特許権が発生していることを理解し、特許権の侵害を未然に防ぐ意味もあります。また、特許出願中においてもその旨の表示はできます。例えば、「PAT.P」(パテント・ペンディング)という表示や「特許出願中」という表示を見たことはありませんか?

 これはどちらも同じ意味で、まだ特許にはなっていないけれど特許出願はしている、ということを意味するものです。但し、日本では法律上の特許表示には当たりません。
  なぜ特許になっていないのにわざわざ特許を出願していると表示するのでしょうか?これには2つの理由が挙げられます。

(1) 安易な模倣の防止
  特許法には、補償金請求権というものがあります。
  これは、特許出願中の発明についても、第三者の模倣に対して実施料相当額の補償金の支払いを請求することができる権利です。
  従って、商品に特許出願中である旨の表示をすれば、ライバル会社に商品の安易な模倣はリスクがあることを知らしめることができます。
(補償金請求権が認められるためには、特許出願が公開されていること、模倣している者に対し警告をすることが条件です。また、この補償金請求権は、特許権の設定登録後に行使することができます。)

(2) 付加価値の付与
  この商品に関する技術が特許出願であることを消費者に知らしめることで、消費者が商品に付加価値を感じ、商品の売り上げアップにつながることがあります。
  そのため、「特許出願中」という表示を使用するためだけに特許出願する企業もあると聞きます。最終的に特許になることが期待できない場合であっても、特許出願さえしておけば前項の効果も期待でき、少なくとも同じ発明で他の会社に特許が取られてしまう心配もありません。
  なお、特許を取得した場合は、「特許第1234567号」のように記載します。


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Q11.本当に特許出願してもよいですか?

 特許出願をする以前に、それが本当に特許出願してよい発明か否か、必ず検討しておかなければならないことがあります。

それは特許出願しようとしている対象がノウハウである場合です。

 ノウハウとは、秘密にしている限り他人には知り得ない技術情報です。出願すべき対象がノウハウである場合、特許になれば問題ありませんが、特許にならなかった場合は問題です。
  なぜなら、特許出願を行うと、出願日から1年6ヵ月経過後に自動的に出願の内容が公開されて他人が知りうる状態になりますから、ライバル会社にノウハウの利用を容認することになるからです。


  他人の実施を抑制するために特許出願を行うのだ、と言っても、特許を取得できなかった場合は、単にノウハウを全世界に公開したにすぎず、それまでにかかった費用も考慮すれば、まさに泣きっ面に蜂です。


  特許権の存続期間は、原則として、その特許出願の日から20年です。特許を取得できたとしても、そのノウハウは特許権が消滅すればその後は誰でも実施できるようになってしまいます。本来、半永久的に秘密にすることができたはずのノウハウだった場合は、大きな損失となるリスクもあります。


  ノウハウはその性質上、侵害行為を発見することが難しいものです。そのため、仮に特許を取得できたとしても、実際に権利行使するとなるとその立証は困難乃至不可能となり、せっかく特許を取得しても使えない権利となってしまいます。


  例えば、「製造方法」の発明にはノウハウが存在する場合が多くあります。一般に食品関係の製造方法の発明は工場や研究室内で実施されることが多いため、そもそも関係者以外は内部を確認することが困難であり、侵害行為を発見しにくい側面があります。
  このような事情から、製造方法の発明に関しては、その物が特許出願前に公然知られたものでないときは、特許に係る製造方法により生産したと推定される救済規定があります(特許法第104条)。


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Q12.「特許は儲かる」は本当?

 昔ほどではありませんが、世間では「特許は儲かる」という風潮がいまだに存在しているように思います。
  特許でひと儲けするために特許出願する、これは技術の進歩にもつながりますので好ましいことといえますが、知的財産に関わっている方ならもうお分かりの通り、「特許は儲かる」という考えは特許の一つの側面しか見ていないといえます。


  なぜなら、特許出願から登録までに少なくとも平均で70万円以上の費用を必要とし、さらに特許権を取得した後も特許料を支払わなければならないことを考えると、1件の特許で100万円以上の費用がかかるからです。この点だけを見れば、単純に「特許は儲かる」とはいえません。


  しかし、「Q2.なぜ特許を取得する必要があるのか?」でも説明したように、特許には「自社の技術を守る」という側面と、「財産として活用する」という2つの側面があります。


  「自社の技術を守る」という側面で特許を活用する場合であっても、特許が第三者の模倣を防止して利益を確実なものにするものだと考えれば、特許が利益の確保に貢献しているといえますから、プラスの効果は確実に存在します。
  「財産として活用する」のであれば、特許権を他人に売ったり、ライセンス契約により他人に発明を実施してもらう代わりに、対価(譲渡料やライセンス料)を得ることができます。


  自社の技術を守る場合も財産として活用する場合も、特許を取得することで権利者に収益を得る機会を与えて、それをもとにまた新しい技術を創造することが、特許庁が推奨する「知的創造サイクル」の考えですから、そもそも儲からないような特許は持っていても仕方がないのです。


 休眠特許があればコスト削減のため放棄したり、他者に譲渡するなど、マイナスをプラスに転じるような知的財産戦略を検討しましょう。つまり、「特許は儲かる」のではなく、「特許で儲ける」のです。発想の転換が必要なのです。


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Q13.侵害を発見したらどうすればよいか?

 第三者が他人の特許発明を無断で実施することは特許権の侵害になります。その中には意図する侵害もあれば、意図しない侵害もあるかもしれません。しかし、いずれにしてもそのままの状態を放置すれば、特許権者の利益は損なわれることになります。そのため、特許権者は特許権に基づいて、差し止め請求、損害賠償請求などの対策を講じるべきです。
  そうはいっても、訴訟は時間も費用もかかりますので、あくまでも最終手段として考えておくべきです。多くの問題は訴訟の前段階で解決することがほとんどだからです。

(1) 特許の有効性を確認する
  意外に思われるかもしれませんが、侵害者に警告をしたのに権利が無効になってしまっては元も子もありません。まずは特許の有効性(無効理由がないか)を確認するため、先行技術の調査や、特許の有効性についての鑑定を弁理士などの専門家に依頼しましょう。
  警告をした後、相手に無効審判を請求されて権利を無効にされたり、裁判において無効な権利に基づく権利濫用と判断されないためにも、まずは自分の足元を固めておく必要があるからです。

(2) 侵害行為を特定する
  相手に警告する前に、相手の侵害行為を特定する必要があります。
  具体的には、相手の製造・販売している商品または実施している方法について、特許請求の範囲に記載された要件に該当するか否かを検討します。この場合も、相手の行為が特許権の侵害に該当するか否かについての鑑定を弁理士などの専門家に依頼しましょう。

(3) 警告書を作成する
  権利行使でどんな目的を達成したいのか、方針を決めましょう。相手の実施行為を差し止め、過去の侵害行為について損害賠償を請求するのが一般的ですが、実施を認める代わりにロイヤリティーを請求することも考えられます。また、新聞などに謝罪広告を掲載させることを要求することもできます。
  警告は内容証明郵便で通知するのが一般的ですが、必ずしも内容証明郵便である必要はありません。


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Q14.警告書が届いたらどうすればよいか?

 自社製品の販売が好調に推移していた矢先、ライバル会社から突然、特許権侵害の警告書が内容証明郵便で届きました。さあ、どうすればよいでしょうか?
  まず、慌てないで弁理士や知的財産権を専門とする弁護士に相談しましょう。警告書が届いた=特許権を侵害したとは限らないからです。

(1) 警告書の内容を検討する
  警告書には必ず権利者の意図が隠されています。
  特許発明の実施を差し止めたいのか、実施を認める代わりにライセンス料を得たいのか、単なる嫌がらせなのか、などです。権利者の意図が見えてくれば、着陸点が見えてきます。

(2) 事実の確認をする
① 権利があるか?
そもそも権利が消滅していれば権利行使も認められません。
また、権利者ではない者の権利行使も認められません。特許原簿を確認すれば、簡単に確認できます。
② 本当に特許権を侵害しているか?
  実施製品そのもの、説明書、パンフレット又はインターネットなどで公表されている製品情報、設計図など弁理士等に提供し、実施製品が特許権を侵害しているか否かについて、弁理士などの専門家に鑑定を依頼します。この時点で非侵害と判断できれば、その旨を通知者に回答します。
③ 抗弁権があるか?
権利者から実施する許可を得ていた、特許出願日よりも前に自社で実施又は実施の準備をしていたなど、法律上の抗弁権があるか確認します。形式的には特許権に抵触する場合であっても、侵害を免れる場合があるからです。
④ 警告者の特許権に無効理由がないか?
  審査の過程で拒絶理由が見落とされ、本来特許にならない出願が特許になっている場合もあります。特許公報、特許製品に関連する雑誌、論文などの技 術資料などを調査し、無効理由の有無を検討します。無効理由があれば権利行使は認められないからです。


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