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商標Q&A




Q1.「商標」とは何か?

 商標とは、消費者に対して、事業者が自社の取り扱う商品やサービス(役務)を他社の商品やサービスと見分けができるように、商品やサービスに使用する目印(識別標識)のことです。そのため商標は、「商品の顔」とか「物言わぬセールスマン」のように表現されることもあります。
 商品に付して使用する商標をトレードマーク(Trademark)、サービスに使用する商標をサービスマーク(Service mark)といいます。
 サービスマークについて説明を加えると、サービス業者が提供するサービスにつけられている名称のことをいいます。例えば、サービスの提供を業務とする輸送業、ホテル、レストラン、銀行、保険、広告代理店等のマークがこれにあたります。ヤマト運輸株式会社の「宅急便」はサービス名を表すものとして知られています。

 出願の際には商標登録を受けようとする「文字」、「図形」、「記号」、「立体的形状」を決め、色彩を付す場合はその色彩も決める必要があります。また、文字や図形などの商標の他に、清涼飲料水のビンや、店頭に宣伝用に置かれた人形なども商標登録できます。以下は商標の種類です。


文字商標 文字からなる商標。文字は、カタカナ/ひらがな/漢字/ローマ字/外国語/数字等の組み合わせによって表されます。
図形商標 マーク・キャラクター・ロゴ状に表記した文字や図形を含む商標
記号商標 のれん記号・仮名文字・アルファベット文字を輪郭で囲んだもの、文字を図案化して組み合わせた(モノグラム化した)記号等
立体商標 キャラクターの立体看板・文字やマーク付きの容器(容器自体を特殊な形状にしたもの)等
結合商標 異なる意味合いを持つ文字と文字、図形と記号、図形と図形等と文字の二つ以上を組み合わせた商標

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Q2.商標登録を受けることができない商標とは?

 消費者が商品又はサービスの出所を混同しないように、他者によって特許庁にすでに登録されている商標と指定商品又は指定役務(サービス)が同一又は類似するものは登録できません。また、特許庁に登録されていなくても、誰もが使うような商標は、やはり登録されません。

 以下は登録されないケースの一部の例です。下記の例以外にも、登録にならないケースがありますので、出願の際は十分に確認しましょう。



(1)指定する商品・役務の普通名称そのものや、その略称、俗称
商品又は役務 商標
時計 時計
靴の修理 靴修理
損害保険の引き受け 損保
パーソナルコンピュータ パソコン
*但し、デザイン化したロゴであれば登録される可能性があります。

(2)指定する商品・役務(サービス)について慣用されている名前(慣用商標)
商品又は役務 商標
清酒 正宗
宿泊施設の提供 観光ホテル
損害保険の引き受け 損保
興行場の座席の手配 プレイガイド
餅菓子 羽二重餅


(3)指定する商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、 数量、形状(包装の形状を含む。)、価格等を普通に用いられる方法で表すにすぎない名前
商品の産地 足袋 行田
商品の販売地 洋服 東京銀座
商品の品質 自動車 デラックス
商品の効能 薬剤 万能
商品の用途 登山
商品の数量 鉛筆 1ダース
商品の包装の形状 自動車 自動車と認識させる立体的形状
商品の価格 ボールペン 百円
商品の生産の方法 コーヒー 炭焼き
役務の提供の方法 洗濯 ドライクリーニング


(4)ありふれた氏名又は名称を普通に表示することや、それに「株式会社、「商会」、「研究会」を付した名前
ありふれた氏・名称 「山田」「YAMADA」
「佐藤商会」
「TAKAHASHI Co.Ltd.」
*但し、デザイン化したロゴであれば登録される可能性があります。


(5)極めて簡単で、かつありふれた文字・図形
極めて簡単・ありふれた文字や図形 「 ― 」 (一本の直線)
」 (円柱)
*但し、デザイン化したロゴであれば登録される可能性があります。


※出典:「特許庁 どのような商標が登録にならないのか


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Q3.地域団体商標制度とは?

 商標は、登録を受けるにあたって、自他商品やサービスが他の商品等と見分けができるか、つまり、識別力があるかどうかが要求されるため、商品の産地や販売地、商品の普通名称などはそれぞれ単独の名称では登録できません。

 そして、従来は、「地域名+商品(サービス)名称など」の商標は、「夕張メロン」「西陣織」など、全国的な知名度がなければ登録が認められませんでしたが、商標法の改正により、2006年4月1日より地域団体商標制度が導入されました。この制度は、地域の特産品やサービスなどのブランド化を通じて地域経済を活性化し、地域ブランドを保護することを目的としており、「地域名+商品(サービス)名称や慣用商標」からなる商標について、一定の範囲で周知となった場合には、事業協同組合等の団体が地域団体商標として登録することを認める制度です。


地域団体商標として登録されるためには…

・事業共同組合、農業協同組合、漁業協同組合など、一定の資格のある者で設立された法人格を有する組合であること
・団体の構成員に使用させる商標であること
・商標が登録を希望する商品(サービス)の表示として周知となっていること
・商標が下記のような文字の組み合わせからなる商標であること
① 地域名+商品(サービス)の普通名称 
② 地域名+商品(サービス)の慣用名称
③ 地域名+商品(サービス)の普通(慣用)名称+産地表示の際に慣用されている文字

などの要件を満たすことが必要です。


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Q4.指定商品・指定役務・類似群コードとは?

(1)指定商品・指定役務とは

 「指定商品・指定役務」とは、登録を受けようとする商標を使用する商品又は役務(サービス)、或いは使用を予定している商品又は役務(サービス)を出願時に出願人が指定するもので、商標と同様に、商標権の権利範囲を定める上で極めて重要となります。
商品や役務(サービス)の指定にあたっては、省令別表(商標法施行規則第6条)で決められている「区分」に従って、明確に指定する必要があります。この省令別表では、商品についての区分は第1類~第34類となっており、役務(サービス)についての区分は第35類~第45類となっています。
 1つの出願で、1区分を指定することも、複数の区分を指定することもでき、商品と役務(サービス)を指定することもできます。


(2)類似群コードとは

 特許庁の審査においては、商品や役務(サービス)が類似するか否かを判断する必要があるので、互いに類似する商品又は役務(サービス)であると推定されるものを「類似商品群」又は「類似役務(サービス)群」とし、個々の商品又は役務(サービス)に5桁の「類似群コード」を付しています。
 これは、先願・既登録調査、権利範囲の確認、拒絶理由解消のための指定商品又は指定役務(サービス)の補正、他人の登録商標との権利の抵触の有無の判断等に利用されています。


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Q5.区分とは?

商標登録出願を行うには、商標をどのような商品に使用するか、または、どのような役務(サービス)に使用するかを指定する必要があります。その際、指定する商品や役務は、国際条約に基づいて定められた「商品及び役務の区分」に従って指定することになります。


 「商品及び役務の区分」は、下記の一覧表に示すとおり、世の中のあらゆる商品又は役務をざっくり45に分類したものです。なお、商品・役務は一覧表に示されているもののほか、下位概念に相当する商品・役務が細かく規定されています。


 この区分の数が多ければ、それだけ広範囲の商品又は役務を権利としてカバーすることになるため、特許事務所や特許庁に支払う費用も高くなります。


区分

商品・役務(サービス)

第1類

工業用、科学用又は農業用の化学品

第2類

塗料、着色料及び腐食の防止用の調製品

第3類

洗浄剤及び化粧品

第4類

工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤

第5類

薬剤

第6類

卑金属及びその製品

第7類

加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械

第8類

手動工具

第9類

科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電気制御用の機械器具

第10類

医療用機械器具及び医療用品

第11類

照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又は衛生用の装置

第12類

乗物その他の移動用の装置

第13類

火器及び火工器

第14類

貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計

第15類

楽器

第16類

紙、紙製品及び事務用品

第17類

電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック

第18類

革及びその模造品、旅行用品並びに馬具

第19類

金属製でない建築材料

第20類

家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの

第21類

家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁器製品

第22類

ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維

第23類

織物用の糸

第24類

織物及び家庭用の織物製カバー

第25類

被服及び履物

第26類

裁縫用品

第27類

床敷物及び織物製でない壁掛け

第28類

がん具、遊戯用具及び運動用具

第29類

動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物

第30類

加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料

第31類

加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料

第32類

アルコールを含有しない飲料及びビール

第33類

ビールを除くアルコール飲料

第34類

たばこ、喫煙用具及びマッチ

第35類

広告、事業の管理又は運営及び事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

第36類

金融、保険及び不動産の取引

第37類

建設、設置工事及び修理

第38類

電気通信

第39類

輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配

第40類

物品の加工その他の処理

第41類

教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動

第42類

化学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発

第43類

飲食物の提供及び宿泊施設の提供

第44類

医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林業に係る役務

第45類

冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属するものを除く。)、警備及び法律事務


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Q6.出願から登録までの手続は?

(1)出願をしたら
出願書類を特許庁へ提出すると、審査官と呼ばれる人が、その商標が登録されるべき要件を満たしているか否かの審査を行います。そして、出願後およそ6~8ヶ月後に、審査官から登録査定又は拒絶理由が通知されます。登録査定か拒絶査定かによって、下記のように対応は変わってきます(下記参照)。

通知書

拒絶理由通知書

登録査定

通知内容

「あなたの商標は登録されるべき要件をみたしていないので、登録を認めない」という内容の通知書

※拒絶の理由は「指定商品・サービスの表現が曖昧」「他人の登録・出願商標と同一又は類似」「商標自体に識別力が無い」等、様々です

「あなたの商標は登録されるべき要件をみたしているので登録を認める」という内容の最終判断

対応

拒絶を解消するために、意見書や手続補正書等を特許庁へ提出します

拒絶が解消された場合は、登録査定が通知されます

商標の登録料を納付します

登録料を納付して、はじめて商標権の設定登録が行われます(→(2)を参照ください)


(2)登録査定が通知されたら
 登録料は通常10年分を納付します。
 登録料を納付し、設定登録されると商標権が発生します。同時に、登録番号及び登録日が記載された登録証が特許庁より送付されます。

 登録料は、5年分ずつ2回に分けて納付することもできます(これを分割納付といいます)。分割納付は、5年以上その商標を使用する可能性が低い場合などに検討されると良いでしょう。


(3)商標権の更新について
 商標権の存続期間は設定登録日から10年間です。もし、「10年以上もっと使いたい!」ということであれば、更新手続を行うと(存続期間の満了日6ヶ月前から更新可能)、さらに10年間存続期間を延長できます。更新回数には制限がないため、商標権の存続期間の更新登録を繰り返すことで、商標権は永久的に存続させることができるのです。


(4)登録後の商標権の注意点について
 せっかく登録した大事な商標ですが、後になって登録が取消され、商標権が消滅してしまう場合があります。それは、登録商標を日本国内で継続して3年以上使用していない場合です。
 自動的に消滅するわけではありませんが、第三者が「不使用取消審判」という審判を特許庁に請求した場合、商標権者が登録商標の日本国内での使用事実を立証できない場合は登録が取り消されてしまいます。登録商標を使用していない場合は、その商標に業務上の信用が発生しないため、登録しておく価値がないと判断されるからです。「3年以上」ですから、登録になってから3年以内の商標は取消の対象となりません。
 一方、不使用取消審判の請求があった場合に、慌てて使い始めても、適正な使用とは認められず、その商標の登録は取消になりますのでご注意ください。


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Q7.実際に商標を使用していなくても登録できる?

 日本の商標制度は実際に商標を使用した事実がなくても、所定の登録要件を満たせば商標登録が可能です。
 そのため、事業と全く関係のない者が先取り的に商標登録をしてしまい、その結果、実際には使用されていない登録商標が数多く存在しているという問題が起きています。


 そこで特許庁は不使用商標対策として、平成19年4月1日以降の商標登録出願について、まるで「本当にその商標を指定商品・役務について使用しますか?」といわんばかりに厳しく審査するようになりました。 
審査の運用では、1区分内に8以上の類似群にわたる商品又は役務を指定している場合に、

この商標登録出願は広範な範囲にわたる商品を指定しているためそれらの指定商品の全てについて使用しているか又は近い将来使用をすることについて疑義があるといわざるを得ません。従って商標法3条1項柱書の要件を具備していません。


という拒絶理由が通知されることになっています。「商標法3条1項柱書の要件」とは、いわゆる「商標を使用する意志」の要件のことです。このような拒絶理由通知が来た場合の対応策としては、例えば以下のものが挙げられます。

1

指定商品又は指定役務に係る業務を行っていることを証明する書面を提出する。

2

指定商品又は指定役務に係る業務を行う予定があることを証明する書面を提出する。具体的には以下の書類を提出する。
・商標の使用を開始する意思を証明する書面
・事業計画書


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Q8.商標は登録していないが、昔から使用していれば大丈夫?

 商標法は、昔から商標を使用している、使用していないにかかわらず、原則として先に商標登録出願をした者に権利を付与することになっています(先願主義)。


 つまり、昔からその商標を使用していても、後から他人に同じ商標を登録されてしまったら、原則として商標権者のみに独占的な使用が認められることになります。


 そのため、使用している商標と同一又は類似する商標が登録になっているが、今まで権利者から何も言われないから大丈夫と思っていても、突然権利者から警告が来て商標を使用することが出来なくなる場合があるのです。


※ただし、例外もあります。
「先使用による商標の使用をする権利」です(商標法第32条)。
これは、①他人(商標権者)が商標登録出願する前から、②その登録(出願)商標と同一又は類似する商品又は役務(サービス)において、③同一又は類似する商標を日本国内において使用し、④その商標がある程度有名(周知商標)になっている場合は、引き続きその商標を使用することが認められる権利です。先に商標を使用していた者が築き上げた業務上の信用を既得権として保護しようとするものです。


 しかし、不正競争の目的で使用していたのであれば、「先使用による商標の使用する権利」は認められませんので注意が必要です。


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Q9.商標調査は重要?

「独自に新しい商標を考えたのですぐに新商品に使いたい」
「現在使用している商標を登録したい」


 などの場合は、出願する前に商標調査を行うことをお勧めします。
それは以下の理由からです。


(1)商標権の侵害を未然に防ぐために
 貴社の商標と同一又は類似の商標をすでに他者が登録していた場合、貴社の商標の使用は他者の商標権を侵害することになってしまいます。これは絶対に避けたいところです。
  このようなリスクを軽減するために、使用する予定の商標がある場合は、その商標が登録されていないか、必ず商標調査をしましょう。


(2)出願費用を無駄にしないために
 商標を出願しても、同一又は類似の商標が先に登録されている場合は登録を受けることができません。他者の商標が出願中の場合でも、その出願商標が審査において拒絶されたり却下されなければ、貴社の商標は登録されません。
 ですから、出願前に貴社の商標と同一又は類似の商標が同一又は類似の指定商品又は役務(サービス)において登録(出願)になっているかを調査することで、出願や意見書等にかかる無駄な費用を抑えることができます。


(3)ブランド戦略のために
 商標調査をすれば、他者が所有する同一又は類似の商標の存在を知ることができます。また、分野別に商標の登録状況を把握すれば、ブランド戦略等の事業計画にも役立ちます。


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Q10.「商標権」とは?

商標権の効力範囲 商標権とは、特許庁に登録された商標に与えられる権利です。 
商標権があることで、登録された商標を独占的に使用することができ、他人はその登録商標を無断で使用することはできなくなります。
また、商標権の特徴として、まったく同じ商標だけでなく、似たような商標の使用を禁止することもできます。


 ここで注意したいのが、商標権の効力が及ぶ範囲というのは、「商標」と「商品又は役務(サービス)」の2つを考慮する点です。
 つまり、「商標」と「指定商品又は指定役務」が共に同一又は類似する場合に初めて商標権侵害が成立することになります。ですから、極端なことを言えば、商標が同一・類似であっても、商品又は役務が同一・類似でなければ原則として侵害とはなりません。

 

商標:同一

商標:類似

商標:非類似

商品・役務:同一

効力及ぶ

効力及ぶ

及ばない

商品・役務:類似

効力及ぶ

効力及ぶ

及ばない

商品・役務:非類似

及ばない

及ばない

及ばない


 但し、例外もあります。商標が著名な場合です。全国的に知られているような有名な商標は、たとえ商品・役務が非類似であっても「もしかしたらあの会社に関係する商品(役務)かもしれない…」と思われる場合があります。そのような場合、非類似の商品・役務(サービス)であっても商標権の効力が及ぶ場合がありますので注意が必要です。


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Q11.商標権の存続期間・権利期間とは?

(1)商標権の存続期間
 存続期間とは、法によって定められた権利が存続する期間のことをいい、商標権の場合は登録日から10年(登録料を分割納付した場合は登録日から5年)で権利が終了すると定められています。
 ただし、商標に蓄積された業務上の信用を保護することが商標法の目的ですので、長年の使用によって業務上の信用と結びついた商標は、商標の使用が続く限り商標権を存続させることが望ましいといえます。
 そこで、商標法では更新登録の申請を行えば存続期間をさらに10年更新することができるようになっています。そして、更新回数には制限がないため、更新登録を繰り返すことで商標権は永久的に存続することになります。


(2)商標権の権利期間
 権利期間とは、権利が有効に保護される期間のことをいい、商標権の場合は、登録日から権利が発生します。
 ちなみに、特許権や実用新案権では存続期間が出願日から起算されますので、特許権や実用新案権の場合は存続期間よりも権利期間が短くなります。
 一方、商標権の場合は存続期間が登録日から起算されるので、存続期間がそのまま権利期間となります。



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Q12.小売業・卸売業における商標登録制度とは?

 小売業者・卸売業者がその業務に関わる小売・卸売に使用する商標は従来登録することができませんでした。その理由は、小売業や卸売業における業務は商品を販売するための付随的な役務であることや、その業務に対して直接的な対価の支払いが行われていないからです。
 そのため、従来は小売業者の商標(店名や店のマークなど)を保護するためには、取扱商品を指定して商標を登録し、商標の保護をしてきました。この場合、多種類の商品を取扱う小売業においては、商標登録出願の際に、保護を受けたい商標を取扱商品ごとに区分を指定しなければならないので(多区分指定)、費用の面で負担がありました。
 しかしながら、近年小売業や卸売業による業務に使用される商標の重要性が増したことから、これらの小売業者・卸売業者の商標を保護するため、小売等役務商標が認められるようになりました。


例)小売業・卸売業とは、

デパート・コンビニエンスストア・家電販売店・ドラッグストア・肉屋・酒屋・八百屋・本屋・家具屋・飲食料品スーパー・百貨店・卸問屋など(※カタログ、新聞、雑誌、テレビやインターネットを利用した通信販売も対象)

具体的には、小売業・卸売業におけるサービス活動の一環として、例えば下記のような箇所に付される商標が挙げられます。

店舗の看板・店舗内の販売場所の案内板 /店員の制服・名札・ワッペン/取扱商品の値札、会計用レジスター/広告、チラシ、価格表、レシート/スーパーの包装紙、レジ袋、買い物袋/ショッピングカート、買い物かご/陳列棚や販売コーナーテレビ広告・インターネットにおける広告などに表示する商標

※「鈴木商会」や「田中商店」のように、多くの事業者が使用している店名等は登録されません(但し、特定の事業者の商標として全国的に有名になっていれば登録の可能性があります。)。


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Q13.不使用による登録商標の取り消しとは?

登録した商標を使用していない場合は、その商標に業務上の信用は発生しません。そのため第三者は、「日本国内で継続して3年以上不使用の状態にある登録商標」に対して、登録を取り消す審判を請求することが可能です。これを「不使用取消審判」といいます。
「3年以上」ですから、登録になってから3年以内の商標は3年経過していないので、たとえその商標が指定商品において使用された事実が無いとしても、取り消しの対象とはなりません。



 不使用取消審判の請求があった場合、被請求人である商標権者は、登録商標を使用していること又は請求のあった日から過去3年以内に登録商標を日本国内で使用していた事実を証明しなければなりません。


 そして、商標権者が使用の事実を証明できなければ、登録は取り消されます。登録商標が不使用だと判断されれば、判断された日からではなく、審判請求の日まで遡ってその登録が取り消されます。


 なお、不使用による取消を免れるために慌てて登録商標を使用しても、それが不使用取消審判請求前3ヶ月の使用だった場合は「駆け込み使用」であるとして、適正な「使用」とは認められませんのでご注意を。


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Q14.外国で商標権を取得するには?

◇ 外国で商標権を取得する必要性
 商標権の効力は、商標権を取得した国(領域内)に限られ、その領域を超えて他国にまでその効力が及ぶものではありません。
 ですから、日本で商標登録され商標権を得たものであっても、それは日本の法律に基づいており、日本国内のみで有効であるため、外国まで権利が及ぶものではありません。したがって、外国において商標権を取得したい時は、その国の特許庁に対してその国の商標法に基づいて商標を出願し、登録を受ける必要があります。




 商標を付する商品・サービスの輸出先の国については、他社による類似商標の使用を防ぐことや、商標トラブル(例えば「自社の商標が使用できない・できなくなる」、「第三者の商標権を侵害してしまうことになった」等)を未然に防止するためにも、商標登録をし、商標権を得てブランドを保護することが不可欠です。 


 また、もし商標トラブルに巻き込まれた場合、現地へ赴いて対応したり、現地の弁護士を雇っての訴訟対策を行わなければならない場合など、高額の費用や多大な労力を負わなければならない状況になってしまう可能性もあります。


外国への商標登録出願は費用がかかるというイメージをもっている方も多いと思いますが(実際にそれなりの費用はかかりますが)、商標トラブルによる高額出費や現地取引先からの信用を失う可能性など、将来のリスクを考慮すれば、多少コストをかけても、その国での商標権の取得は必須と言えるでしょう。


 外国で商標権を取得するには、各国へ商標登録のための出願をする必要があります。これには、以下の4つの方法があります。


(1)パリ条約に基づく出願
 商標登録したい国ごとに出願します。権利も国ごとに発生します。条約に加盟している国(現在171ヵ国)に出願すれば、日本の出願日を基準に審査してもらえるなどの優遇措置があります。


(2)マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコル)に基づく出願
 日本の特許庁に対し出願をすることで、締約国(現在78ヶ国)を複数指定することができます。出願が1回で済むのが特徴ですが、審査は各国で行われます。


(3)欧州共同体商標(CTM)出願
 ヨーロッパで商標登録するのに便利な方法です。登録が認められると、EU加盟国(現在27ヵ国)全体をカバーする商標権を得ることができます。


(4)各国特許商標庁への直接出願
 その国の人と同じ条件で手続する方法です。条約の優遇措置は受けることはできませんが、現地代理人を通じて出願することができます。


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Q15.ⓇマークやTMマークとは?

(1)「Ⓡ」マークとは
 Ⓡとは「Registered Trademark(登録商標)」の略称で、特許庁で商標登録をされていることを示す表記として、日本でもよく使われています。
 もともと「Ⓡ」マークはアメリカで商標登録を認められたときにつけるもので、アメリカでは登録商標には「Ⓡ」マークをつけることが義務付けられています。
 日本においては登録商標に「Ⓡ」マークの表記を義務付けられていませんが、「登録商標」または「登録○○号商標」と書くことが努力義務として課されているので、同じ意味をなす「Ⓡ」マークも慣習的に使用されています。
 表示がなくても罰則はありませんが、「登録商標」、「登録○○号商標」又は「Ⓡ」マークを表示することは、他人が無断で使用することを防止する効果があると考えられます。
 ただし、登録されていない商標に「Ⓡ」の表示を付すと虚偽表示とされる恐れがあるのでお勧めしません。


(2)「TM」マークとは
 TMとは「Trademark」の略語で、単に「商標」を意味するだけで、商標登録されていることを示す表記ではありません。
 一般的にその商標を自己の商品に使用していることを主張するために使われ、「TM」マークに法的な意味はありませんが、こちらも他人の無断使用を牽制する目的で、登録商標出願中の場合に「TM」マークを商標につけることがあります。


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